中目黒の一人暮らしの相場は、駅からの距離ではなく「どの番地か」で動く
中目黒駅周辺で実際に契約が成立した価格を一人暮らし向けの間取りで見ると、1Rは中目黒3丁目の79,800円から上目黒1丁目の110,600円まで幅があります。さらに同じ町の中でも番地によって差があり、上目黒2丁目32番地は町の相場より43.5%低い水準で契約が成立しています。
宅建士として中目黒の成約データを町ごとに集計していて分かったのは、「中目黒の一人暮らしの相場はいくらか」という問いに1つの数字で答えると、実際に部屋を探す人の役にはほとんど立たないということです。
理由は2つあります。1つ目は、中目黒駅から徒歩20分圏に広がる町のあいだでも、成約価格の水準に差があること。2つ目は、同じ町の中でも番地単位で㎡あたりの成約単価が2〜3割ちがう場所が実在することです。
この記事では、中目黒駅周辺の町の一人暮らし向け間取り(1R・1K・1DK)の成約価格と、その内側にある番地単位の差を、実際の契約価格の記録だけを使って整理します。
中目黒で一人暮らしをすると、街はどのように使えるのか
中目黒駅の周辺は、1つの駅だけに依存しない町が多いことが特徴です。上目黒1丁目は中目黒駅まで313m・恵比寿駅まで1137m、上目黒2丁目は中目黒駅まで481m・祐天寺駅まで859mというように、2つ目・3つ目の駅が生活圏の内側に入ります。
一人暮らしの部屋探しでは、この「2駅目までの距離」が効いてきます。中目黒駅だけを条件にして探すと候補が駅前に集中しますが、実際に住むと使う駅は1つとは限らないためです。中目黒駅を起点にした主な町の距離は次のとおりです。
- 上目黒1丁目: 中目黒駅まで313m、恵比寿駅まで1137m、祐天寺駅まで1343m
- 上目黒3丁目: 中目黒駅まで465m、祐天寺駅まで954m、池尻大橋駅まで1569m
- 上目黒2丁目: 中目黒駅まで481m、祐天寺駅まで859m、恵比寿駅まで1620m
- 中目黒1丁目: 中目黒駅まで501m、恵比寿駅まで940m、祐天寺駅まで1553m
- 中目黒3丁目: 中目黒駅まで720m、祐天寺駅まで1078m、恵比寿駅まで1493m
- 東山1丁目: 中目黒駅まで815m、池尻大橋駅まで1121m、祐天寺駅まで1201m
- 祐天寺1丁目: 中目黒駅まで841m、祐天寺駅まで462m、学芸大学駅まで1436m
事実として押さえておきたいのは、中目黒駅からの距離が近い順と、次の駅までの距離が近い順は一致しないということです。上目黒3丁目は中目黒駅まで465mと駅前ですが、祐天寺駅まで954mで2駅を歩ける位置にあります。一方で中目黒1丁目は中目黒駅まで501mと少し離れますが、恵比寿駅まで940mと中目黒駅との差が小さく、恵比寿側を日常的に使う暮らし方が成り立ちます。ここは解釈になりますが、通勤・通学の行き先が決まっている人ほど、駅前かどうかより「2駅目がどこか」で町を選んだ方が条件は合いやすくなります。
一人暮らしで中目黒を選ぶとき、相場の動きをどう読むか
中目黒駅周辺の成約価格は、町ごとに動き方が違います。上目黒1丁目は2021年から2026年の5年間で+12.1%、中目黒1丁目は同じ5年間で+13.9%、上目黒3丁目は+32.6%と上昇していますが、中目黒3丁目は2020年から2025年の5年間で-3.4%と、逆方向に動いています。
現役の大家として実際に部屋を貸している立場から見ると、この「町ごとに動きが違う」という事実そのものが、一人暮らしの部屋探しにとっては使える情報です。エリア全体が一律に動いているなら探す時期を待つしかありませんが、実際には隣り合った町でも上昇幅が異なります。つまり、同じ予算でも選ぶ町を変えるだけで条件が変わる余地が残っているということです。
上目黒2丁目は5年間で+17.0%、中目黒2丁目は+11.1%、東山1丁目は+8.3%、祐天寺1丁目は+19.8%。中目黒という1つの名前でまとめられている範囲の中に、これだけ違う動きが同時に存在しています。
中目黒の一人暮らし、実際の成約価格で見る間取り別の比較
以下の金額は、募集中の物件に出ている希望価格ではなく、実際に契約が成立した価格(成約価格)の平均です。ポータルサイトに並ぶ募集価格は交渉の余地があり、その金額で契約が成立するとは限りません。実際にいくらで決まったかの記録から集計している点が、この表の性格です。
中目黒駅からの距離が近い順に、一人暮らし向けの間取りの成約価格を並べます。
| 町 | 中目黒駅まで | 1R | 1K | 1DK |
|---|---|---|---|---|
| 上目黒1丁目 | 313m | 110,600円 | 110,600円 | 111,700円 |
| 上目黒3丁目 | 465m | 94,300円 | 98,700円 | 113,600円 |
| 上目黒2丁目 | 481m | 91,400円 | 98,000円 | 116,600円 |
| 中目黒1丁目 | 501m | 78,400円 | 88,900円 | 115,700円 |
| 青葉台1丁目 | 640m | 109,800円 | 102,900円 | 119,000円 |
| 中目黒3丁目 | 720m | 79,800円 | 79,400円 | 95,800円 |
| 東山1丁目 | 815m | 91,100円 | 96,600円 | 95,300円 |
| 祐天寺1丁目 | 841m | 77,100円 | 76,900円 | 98,400円 |
| 中目黒4丁目 | 1,041m | 76,800円 | 81,900円 | 99,200円 |
| 中目黒2丁目 | 880m | 120,500円 | 105,400円 | 91,500円 |
| 上目黒4丁目 | 958m | 77,900円 | 85,500円 | 103,800円 |
表を見ると、距離の順番と金額の順番が揃っていないことが分かります。中目黒駅まで880mの中目黒2丁目の1Rは120,500円で、313mの上目黒1丁目の110,600円より上の水準にあります。一方で1DKは中目黒2丁目が91,500円、上目黒1丁目が111,700円と逆になります。距離だけで金額が決まっているわけではない、というのが表から読み取れる事実です。
同じ町の中で、番地によってどれだけ差があるか
ここからがこの記事の本題です。町単位の平均は、その町の中にある番地ごとの差を平らにならしてしまいます。実際に契約が成立した価格を番地単位まで分解すると、次のような差が出ています。数値はいずれも㎡あたりの契約価格(真ん中の値)で、2022年以降の成約分を集計したものです。
| 町 | 番地 | その番地の㎡単価 | 町の相場 | 差 | 集計した成約 |
|---|---|---|---|---|---|
| 上目黒2丁目 | 32番地 | 2,345円/㎡ | 4,150円/㎡ | 43.5%低い | 7件・2棟 |
| 東山1丁目 | 31番地 | 2,873円/㎡ | 4,000円/㎡ | 28.2%低い | 5件・2棟 |
| 上目黒3丁目 | 42番地 | 3,371円/㎡ | 4,619円/㎡ | 27.0%低い | 16件・5棟 |
| 青葉台1丁目 | 18番地 | 3,138円/㎡ | 4,072円/㎡ | 23.0%低い | 11件・3棟 |
| 中目黒3丁目 | 6番地 | 3,020円/㎡ | 3,665円/㎡ | 17.6%低い | 15件・3棟 |
| 祐天寺1丁目 | 8番地 | 3,262円/㎡ | 3,739円/㎡ | 12.8%低い | 6件・2棟 |
上目黒2丁目は中目黒駅まで481mの駅前の町ですが、その中の32番地は町の相場より43.5%低い水準で契約が成立しています。しかもこれは1件だけの偶然ではなく、2棟にまたがる7件の成約を集計した結果です。上目黒3丁目42番地(16件・5棟)、中目黒3丁目6番地(15件・3棟)のように、複数の建物にまたがって同じ傾向が出ている番地もあります。
なぜその番地が安いのかについては、現時点では構造的な理由を特定できていません。 建物の条件によるものなのか、道路付けや周辺環境によるものなのか、ここで理由を推測して書くことはしません。今の段階で確かなことは「事実として番地の間にこれだけの差がある」という一点です。この理由の解明は、今後この媒体で掘り下げていきます。
一人暮らしの部屋探しに引きつけて言えば、「中目黒は予算に合わない」と町単位で判断して候補から外す前に、その町の中に相場から離れた番地が無いかを確認する余地がある、ということになります。
視野を距離の側に広げると、一人暮らしの選択肢はどこまで増えるか
中目黒駅から1キロを超える範囲まで対象を広げると、一人暮らし向けの間取りの成約価格の水準は変わります。祐天寺2丁目(中目黒駅まで1159m)の1Rは72,900円、下馬5丁目(2032m)の1Rは73,900円で、駅前の町とは違う水準の選択肢が存在します。
ここで一度、部屋探しの仕組みの側を見てみます。賃貸ポータルサイトの検索条件は「駅から徒歩5分以内」「10分以内」「15分以内」といった刻みで用意されています。この刻みは検索する側にとっては便利ですが、条件をひとつ外れた物件は、その瞬間に多くの人の検索結果から一斉に消えます。物件そのものの条件が変わったわけではないのに、見られる回数だけが落ちる。結果として、その位置にある部屋は需要が集まりにくくなります。
これは物件の良し悪しではなく、探す側の仕組みが作っている境目です。そして境目のすぐ外側は、条件で機械的に切られているだけなので、自分の足で歩ける人にとっては候補として残ります。
| 町 | 中目黒駅まで | 1R | 1K |
|---|---|---|---|
| 祐天寺2丁目 | 1,159m | 72,900円 | 82,500円 |
| 上目黒5丁目 | 1,221m | 75,600円 | 79,500円 |
| 中目黒5丁目 | 1,214m | 78,500円 | 76,300円 |
| 五本木1丁目 | 1361m | 73,000円 | 88,500円 |
| 下馬1丁目 | 1738m | 75,300円 | 79,700円 |
| 池尻1丁目 | 1939m | 88,400円 | 74,600円 |
| 下馬5丁目 | 2032m | 73,900円 | 77,600円 |
| 下目黒5丁目 | 2,185m | 84,100円 | 79,800円 |
この範囲でも、番地単位の差はそのまま存在します。下馬5丁目9番地は2,410円/㎡で町の相場3,400円/㎡より29.1%低く(9件・2棟)、下馬1丁目27番地は3,017円/㎡で町の相場3,731円/㎡より19.2%低い水準です(19件・4棟)。下目黒5丁目22番地は2,593円/㎡で、町の相場3,253円/㎡より20.3%低くなっています(5件・2棟)。
つまり、距離の側で視野を広げ、その上で番地まで分解すると、条件の幅は二段階で広がります。中目黒駅から1キロを超える町を候補に入れ、さらにその中の番地を見る。この2つを重ねられるかどうかが、同じ予算で選べる部屋の数を変えます。
なお、ここに挙げた金額はすべて、募集時の希望価格ではなく実際に契約が成立した価格の記録から集計したものです。台帳が更新されるたびに集計もやり直しているため、この記事の数値は今後も更新されます。番地単位の割安がなぜ生まれているのかの解明とあわせて、継続して掘り下げていく予定です。





